美しいがゆえに際立つ残酷さ

箪笥 オリジナル・サウンドトラック
数日前、映画『箪笥』を観た。
ポスターやTVスポットから連想される展開を望んで観賞したとしたら肩透かしだったかもしれないが(ノベライズを読んだときにはちょっとそんな感じだった)、美術面でこれ以上ないくらいこだわって、選び抜かれて制作されたというそのセンスが好みにピタリとはまった(恐怖映画としてはどうなんだろう…)。
主人公の部屋のライティングビュロー(欲しい...)や儚げで危うい美しさを湛えた少女たちの花模様に囲まれた部屋と二人のロマンティックなファッション。洒落たボトルが並ぶバスルームで父が刃をセットするクラシカルな髭剃り、継母のティータイムを彩る茶器、そして屋敷を建てたロケーションの素晴らしさ・・・
どこか奇妙で張りつめた空気に息が詰まるような屋敷内の描写とは対照的に、光あふれる戸外はこの世ならぬ何処かを思わせるノスタルジックな美しさを放っていて、二度とは戻れない時間の流れの残酷さを感じさせる。
心を粉々に砕くことになる一瞬、そうとは知らず出かけてゆく主人公のラストショットはセンティメンタルなワルツと共にいつまでも胸に残る。

・・・序盤、船着場で姉が妹の手相を見て"何か"を感じ取ったシーンを観ていて、ふとフェリーニの傑作『悪魔の首飾り』で美しい占い女が主人公トビーの手を見たその時の表情を思い出した。女はトビーの不吉な未来(死)を見たが、少女は妹の手相に何を見たのだろう。clap & send message

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