Polanskiの魔力/Krzysztof Komedaの旋律

海が近いわけではないのだが、この時期海鳥の啼き声で目が覚める。今棲んでいる部屋は、外で発せられるあらゆる音が反響する。窓を開けて過ごす今の季節はときに拷問のように神経を逆なでするのだが、海鳥だけは別。夜が明けると哀しい声を響かせて旋回する。

Roman Polanski監督の『Cul-de-sac (袋小路)』でも海鳥の啼き声が哀しく響く印象的なシーンがある。実業家の男が若い女と再婚し、満潮になると四方を海に囲まれる孤島の城にふたりで暮らしている。私にとっては憧れを絵に描いたような生活であるが、ふたりにとってはそうではないらしい。それどころか閉塞感に苛まれ、その行き止まり感はまさに袋小路。

男を Donald Pleasence (ドナルド・プレザンス:「刑事コロンボ」の犯人役、品があって心に残る)、彼が再婚した若く美しい女を Françoise Dorléac (フランソワーズ・ドルレアック:25歳で事故死してしまうなんてつくづく惜しまれる)が演じている。ドルレアックの退廃的な美しさ。男を破滅させる女。ある日ふたりの棲む島へ招かれざる客が闖入し、事件が起きる。緊張の糸がぷっつりと切れ、ふたりの閉塞状態は解消される。女が男の元を去って往くから。

男は明け方の潮が引いた海を走り、海に突き出た小さな岩の上にしゃがみ込む。無数の海鳥が哀しい啼き声を響かせ、男はたぶん前妻の名なのだろう女の名を叫び、泣き崩れる。男の頭上を飛行機が通り過ぎてゆく。そしてエンドマーク。

この映像とラストシーンで流れる音楽がすごく好きで、ここだけHDDに録画してあってときどき観る。イングランド北東部ホリー島のロケーションや城として登場する修道院だった建物の雰囲気は好きだが、主だった登場人物がみな奇妙で、中盤にとんでもなく腹立たしい子どもが出てきたりするので全部通して観たいとはあまり思わないから。数年前 iTunes Store でこの曲と思われるものを購入したが、曲の終わりが映画と違ってがっかりした。じんわりと余韻が残る、映画のフィニッシュで流れる音楽のあの終わり方が好き。そして頭の中ではこの旋律が廻り続ける。

同じポランスキー監督の『Rosemary's Baby (ローズマリーの赤ちゃん)』の lullaby、"Sleep safe and warm" も1度聴いたら頭を離れない。OPクレジットで流れるマンハッタンの眺め。セピア色の高層ビル群。メトロポリタン美術館の背中からアッパーイーストにカメラは流れ、セントラルパークを越えてアッパーウェストのダコタ・ハウスを映し出す。俯瞰したダコタハウスの外観が、「ヨーロッパ城物語」というTV番組(たまにお城に伝わる背筋が寒くなるステキな伝説が披露されて愉しい)に出てきそうな雰囲気で胸の鼓動が少し早まる。

「ヨーロッパ城物語」で一番印象的だったのは、イギリス・グラームズ城の秘密の部屋の伝説。城の中心となる塔のメインホールの壁の裏に、秘密の部屋が隠されていているという(その証拠は外壁に不自然に残された鉄格子)。伝説によると、"安息日に悪魔とトランプをしていた一族の者が、そのまま部屋ごと壁の中に塗り込められてしまった" という。締めくくりもいい。"18世紀の末から活躍した詩人で小説家のサー・ウォルター・スコットは、ここグラームズ城に次のように書いています。『生きているという実感が次第に薄れて、死が間近に迫っているように感じられた』・・・

話しを元に戻して、ロマンティックで優美な字体のOPクレジットとミア・ファローの繊細な声色。洒落た白を基調にしたアパートメントの内装とインテリア、可憐なローズマリーのファッション。そこにあのストーリーを組み合わせるポランスキーの感覚が好きだ。

音楽を担当しているのはKrzysztof Komeda。美しくて叙情的で、心のどこかがざわつく旋律。今日も頭の中でヘビー・ローテーション。


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以下自分用まとめ。

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